母国レースを制したトヨタ8号車 「5番目に速い車」も正しい戦略が勝利へ導く

WEC/ル・マン24時間

 トヨタ・レーシングの8号車は9月27日、富士スピードウェイで行われたFIA世界耐久選手権(WEC)第6戦富士6時間を制した。平川亮/セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー組がトヨタのホームレースで優勝を果たした。
 8号車は終盤の燃料戦略とタイヤ交換を見送る判断を生かし、速さで上回るアルピーヌを抑えた。

 残り1時間時点でのセーフティカー導入を受け、トヨタは8号車への給油量を抑え、タイヤ交換も行わない選択をした。トラックポジションを優先したこの決断で総合トップに立ち、その後は平川が後続のビクトール・マルタンのドライブするアルピーヌ36号車を抑え込んだ。

 ブエミは「単なる運ではなく、正しい判断をした結果」と戦略を評価。「チームはガードレールの修復に時間がかかると判断し、十分な燃料を入れないことを決めた。そのままレースが再開されれば完走できないことは分かっていたが、修復には時間がかかると分かっていた」と振り返った。

 また、今回の優勝は8号車の速さが勝因だったわけではないと説明する。
「レース全体の平均ペースを見ると、僕たちは5番目に速いクルマだった。それでも勝つことができた。明らかにペースが足りていなかったので、戦略とミスをしなかったことによって勝った」

 レース序盤にはチームメイトの7号車が優位なタイミングを得た一方、8号車は不利な状況に置かれたとブエミは振り返った。しかしレース中には8号車がチャンスをつかみ、結果的に戦略面でレースをまとめ切る形となった。

 ハートレーも、最後の判断が勝敗を分けたと認め「今年は戦略判断がいつも僕たちの思い通りにいっていたわけではなく、何度か不運もあった。でも今回は運だけではなかった。チームが完璧にやり遂げ、最後の判断でフィールド全体を出し抜いた」と語った。
 自身はレース中、ピットアウト直後のターン1でアストンマーティンに接触され、一時順位を失った。その時点では優勝を想定しておらず、「チャンピオンシップに近づいている。まだ良いポイントを獲得できる」と考えていたという。
 しかし、最後のスティントを担当した平川が、ホームコースでの大きなプレッシャーを受けながらトップを守り切った。

 セーフティカー明けは路面が湿り、タイヤも冷えた状態だった。後方には、より新しいタイヤを装着したアルピーヌのビクトールが迫っていた。
 平川は 「『ここでロックアップしたら、すべてを失ってしまう』と何度も考えていた。でも、車は良かった。速さがなかったとしても、自分がクルマをコントロールできている感覚があった」と振り返る。

 また、チームからの無線による情報も支えになったと語る。どこでブロックし、どこでプッシュするべきかについてフィードバックを受けながら、最後の数周を走り切った。「最後の数周はストレスがあった。でも、チームやチームメートから良いフィードバックをもらっていた。だから最後の数周は、僕だけの勝利ではなく、チーム全体の勝利だったと思う」

 今回の勝利によって、25ポイントを獲得した8号車はドライバーズ選手権で首位に立ち、トヨタにとっては7号車とのワン・ツー体制。さらに、マニュファクチャラーズ選手権でのリードを広げた。

TEXT=Takumi YANO

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