
昨年9月にシングルシーターデビューを果たし、2025年シーズンをElite MotorsportからGB4に参戦しているアレックス・山本・カトゥラス。
今シーズンはここまでで1度の優勝と4度の表彰台を獲得している。
ブランズハッチで開催された第16・17戦での現地取材も通して、GB4にたどりついた経緯や日本でのレースも目指しているという将来の展望を聞いた。
まずは、シーズン終盤のレースとなるブランズハッチでの週末から振り返る。
■土曜日


土曜日朝に15分間予選を行い、最速タイムでレース1、2番目に速いタイムでレース2のグリッドを決定し、レース3は予選12位がポールのリバースグリッドとなるGB4のフォーマット。
山本は予選を終え、レース1・2どちらも4番グリッドが決定した。
Q.予選はどうでしたか?
車のフィーリング自体はけっこう良かったんですけど、このサーキット自体はリスクが大きいところもあって…ただ、もう少しリスクをとることもできたんじゃないかなと感じています。
チームメイトのデータも見ていて、タイム的には近くはないけど、そこまで大きな差ではないと思います。だから、全体的には4番グリッドというのは「なんとかなるかな」っていう気持ちですね。
Q.このトラックでもっとも難しい場所は?
一番難しかったのは、GPセクションの三つ目のコーナーですね。右・右・右と続く高速コーナーで、すごく速くて。でも、そこをうまくまとめられればすごくいいラップになるので、そこがポイントかなと思います。
Q.チャンピオンシップにとっても大事な後半戦、レースに向けては?
自分はあんまりチャンピオンシップというより、目の前の優勝とか表彰台とか、そういう目標に集中してます。だから、あまりタイトルのことは意識してないですね。
レースに対しては絶対に自信はあります。何があってもベストを尽くすつもりです。
このサーキットはオーバーテイクが結構難しいですね。だからこそ、いいスタートがきれれば、そこからP3、P2っていうチャンスもあると思います。


予選の3時間半後の17時に開催されるレース1は暗い雲が広がり気温が大きく下がったコンディションとなった。
メインストレートの傾斜とアンジュレーションの影響を大きく受ける4番グリッドからスタートした山本は、トラクションの良い5番グリッドスタートの水色、ダグラスモータースポートのルーク・ヒルトンに先行を許す。
しかし山本はひかずにヘアピンのターン2でアウトから仕掛けヒルトンをオーバーテイク。4位を取り返した。
その後はトップ3台に離されることなく走るも、高速コーナーの多く狭いブランズハッチで仕掛けることは難しく4位を走行することに。
残り5分、ヒルトンがグラベルにスタックしたことでSCが導入。レースは再開されることなく時間切れとなってしまい、山本はスタート順位の4位でレースを終えた。

優勝はチームメイトのアイザック・フィリプスがPole To Win。2位にアリ・バンサル、チャンピオンシップリーダーのダニエル・ギンチャルドが3位に入る。フィリプスがギンチャルドとのポイント差を縮める形となった。
■日曜日



日曜日はレース2・3が開催。
レース1と大きく異なり青空の広がるケントのサーキットで、朝早くから車に乗り込む。
4番グリッドから18分間のレース2に挑むことになる。
山本はトラクションが有利な5番グリッドスタートの赤色の27号車、アーデンのリオン・ウィルソンに対しポジションを失うレース1と同じ展開に。
ターン2のアウトサイドからオーバーテイクを狙うも、ブレーキを遅らせすぎてしまい外に膨らむ。
レアンドロ・ユンカスとヒルトンに並ばれ、7位まで順位を落としたように見えたが、ターン3のインサイドからオーバーテイク。なんとか5位まで順位を戻すことに成功した。
前方では2位のギンチャルドがフィリプスに高速コーナーのアウトから仕掛けるも、そのすきを突かれバンサルが2位浮上。レース1と同じトップ3の並びとなった。
山本の目の前、4位を走るウィルソンのペースは上がらないものの、タイトなコースで山本も抜くことができず。さらに後ろのアレックス・オグレディにインサイドを覗かれる苦しい展開となる。
しかしながらレース後半はウィルソンの真後ろにつけ機会をうかがうが、残念ながら時間切れ。
レース2を5位でチェッカーを受けた。

優勝はフィリプス。2位にバンサル、3位ギンチャルドとレース1と同じ表彰台。
依然チャンピオンシップリーダーのギンチャルドは341ポイントで、フィリプスに21ポイント差まで迫られることとなった。
続くリバースグリッドのレース3が午後に予定されていたが、11時ころにジネッタで大クラッシュが発生。
安全確保とコース改修に時間が必要となり、GB4のレース3はキャンセルとなってしまった。
その後、最終戦ドニントンへレースが持ち越されることが決定された。
ふたつのレースのみとなってしまったブランズハッチでのレースをアレックス・山本に振り返ってもらった。
Q.レースの感触は?特にスタートに苦しんでいたように見えましたが。
スタートはあまり良くなかったですね。グリッドにちょっと傾斜があって、さらにキャンバーもあるので、クラッチのセットが難しく、感覚も少し分かりづらくて。
すぐにホイールスピンしてしまいましたね。レース1ではその後1台抜けました。
ただ、レース2では、ターン2でレイトブレーキングしてアウトサイドから4番手を狙ったんですが、ちょっとロックアップしてしまって、うまくいかなかったです。
その後、前を走っていたリオン・ウィルソンの車があまり速くなくて、でもブランズハッチのダーティエアは本当にひどいんですよね。
コーナーが全部ハイスピードなので、近づくとステアリングの感触がなくなって、抜くのが本当に難しかったです。ちょっと悔しいレースでしたけど、ペース自体は間違いなく良かったです。もしパスできていたら、確実にもっと前に出られていたと思います。ただ、本当にオーバーテイクが難しいレースでした。
Q.ドニントンは4レースになりますが、体やスケジュールへの負担という面では問題はありますか?
全然問題ないですね。朝早いレースは確かに大変なこともありますが、レースはやっぱり楽しいので大丈夫です。
延期となってしまったレースにも自然体で挑む山本。
そんな彼には、実はGB4参戦以前にレースから離れていた期間がある。
次に、そのブランクを経て復帰することになった経緯、そしてそもそもレースを始めたきっかけについて聞いた。
Q.GB4に参戦する前、レースを休んでいた期間がありましたが、GB4に参加することになったきっかけや、レースをはじめたきっかけなどを教えてください。
僕は7歳のころからレースを始めました。

最初はカートで、ヨーロッパや世界選手権などにも出場していました。14、15歳くらいまでは順調にレースを続けていましたが、その後で一度ブレイクがありました。
実は、けがをしてしまったんです。足と肩を負傷したのですが、肩はそこまで深刻ではなかったものの、足のけががかなり深刻で、完治までに3年ほどかかってしまいました。
歩くのも痛かったですし、ブレーキペダルを踏むと特に痛くて痛くて。
それで、15歳から17歳くらいの間は「もうレースは終わりかな」と思っていて、まったくレースのことは考えていませんでした。
レースをしていなかったその2年間は、F1も含めてまったく見ていませんでした。
でもある日、FIA-F3のレースをYouTubeで見たときに、アイザック・ハジャーが走っているのを見かけたんです。
<a id='cYW8MY3fR7RHoquU8GQNLQ' class='gie-single' href='http://www.gettyimages.com/detail/2173885758' target='_blank' style='color:#a7a7a7;text-decoration:none;font-weight:normal !important;border:none;display:inline-block;'>Embed from Getty Images</a><script>window.gie=window.gie||function(c){(gie.q=gie.q||[]).push(c)};gie(function(){gie.widgets.load({id:'cYW8MY3fR7RHoquU8GQNLQ',sig:'K6dtPnUmYEB7LeKBecVdYjJi87q-OfVEhfCdHGMxiLo=',w:'594px',h:'396px',items:'2173885758',caption: true ,tld:'com',is360: false })});</script><script src='//embed-cdn.gettyimages.com/widgets.js' charset='utf-8' async></script>彼はカート時代に僕のチームメイトだったので、「ああ、彼がここまで来ているんだな」と思ったと同時に、「自分もまたやれるかも」と感じました。それがきっかけで少しずつ気持ちが戻ってきて、最終的に父に「テストを受けたい」と話しました。
18歳のときに高校を卒業して、イギリスの大学に進学することが決まり、その前に父と一緒に「もう一度できるかも」と話しはじめたんです。
当時はシンガポールで暮らしていたので、試しにマレーシアのセパンまで行って、フォーミュラ・リージョナルでテストをしました。
そのときのタイムがけっこう良くて、それが「再挑戦しよう」と思えた最初のきっかけです。4年間全くレースをしていなかったので、少し不安でしたけど。
その後、イギリスのノッティンガム大学で数学を専攻することになりました。数学の勉強はとても大変で、GB4の両立は難しくなってきたので、今は大学を一時休学してレースに専念しています。
また、4年間レースから離れていたためライセンスのレベルもほとんどゼロに戻ってしまっていて…。
最初はイギリスのMX-5カップで5レースくらい走って、ライセンスレベルを上げる必要がありました。
そのあと、GB3のテストにも参加しましたが、そのときはまだ少し早いかなと感じました。
なので、GB4から再スタートすることに決めて、2024年から本格的にレース復帰を果たしました。ここまでの道のりは、他のドライバーと比べるとかなり異なっていて、自分は周りのドライバーより2~3歳くらい年上になります。

でも、この休止期間があったことで、ちゃんと学校に通って、友達もできて、いろいろな経験ができたので、レースをしていなかった時期も今となっては良い時間だったと思っています。
GB3のテストは、たぶん40日くらいやったと思います。2024年ごろでしたが、GB3の車は速すぎて、自分にはまだ少し早いかなという印象でした。
だから、GB4に挑戦することにしました。もちろん車もいいし、チャンピオンシップもかなり激しいですから。最初の決断は2024年の10月くらいだったと思います。
その後、何度かテストを行い、スペインにも行って、プレシーズンを過ごしました。そのときはまだ完全にレースモードに入り切れていなかったので、「もう一度やっているんだ」という実感が湧いてきたのは、冬の間でした。
Q.9月11日からドニントンで開催のGB3テストに参加していましたが、久々のGB3はどうでしたか?
(9月13日取材)
昨日もテストをしていましたが、すごく楽しかったです。
GB4に比べるとかなり難しい車ですが、速くて楽しいですね。特にロースピードでは扱いが難しいですね。車は大きくて重くて、タイヤも大きいのでステアがあまり効かない。でもハイスピードではダウンフォースがしっかりあって、とても楽しいです。やっぱり新しいことをやるのは楽しいですね。いいテストでした。ヒルスピードのチームもすごく良くて、初めての走行で一番タイムが出せたので、楽しかったです。
ただ、朝はドライだったけど、昼から雨が降ってきたので難しいコンディションでした。
また、ルイ・シャープ(2024年GB3チャンピオン)がリファレンスドライバーとして一緒に走っていましたが速かったですね。
Q.GB4にはないDRSの感触や、ダウンフォースからくる体への負担は?
DRSはGB3では結構強力ですね。
レースではスリップストリームにDRSが加わるので、オーバーテイクにはかなり有効だと感じました。
体としては、フィジカル面でもしっかりトレーニングしているので、僕は全然大丈夫でした。
Q.今後の目標は?
来年はGB3を目標にしています。ただ、もちろん難しい部分もあります。今後のテストを通じて、そこから判断する形になりますね。
今は複数のチームと話していますが契約を早く決めるのは難しいですね。チームも全ドライバーを見てから最終的な判断をすることが多いのですし。でも、僕もチームも納得できれば、早く契約を決めたいと思っています。
また、具体的にいつかはわかりませんが、将来的に必ず日本でレースをしたいです。
スーパーフォーミュラの車は本当に良いマシンですし、みんながすごく楽しいって言っています。
僕もぜひ乗ってみたいです。
ただ、すぐに行くのは少し難しいかもしれません。スーパーフォーミュラはとてもレベルの高いチャンピオンシップですし、僕は日本でのレース経験がほとんどないので、そこが難しい点ではあります。
でも、新しいことにチャレンジすることは楽しいですし、速い車に乗れるのはすごく魅力的です。
スーパーフォーミュラはF2より速く、F1に近い存在ですから、ぜひ挑戦してみたいです。
GB3としては、来年の車は結構違う仕様になる予定で、新しいアップグレードが入る予定です。エンジンが少しパワーアップして、空力も変わるので、来年の車はかなり違うと思います。だからチームによって完成度に差が出やすくなるかもしれない。そのなかでアップグレード自体はとても良い方向に向かっているので、楽しみにしています。
そして、ヨーロッパを転戦する形になります。スパとか、そういうサーキットを走るのはとても楽しみです。特にスパはみんなが最高のトラックって言っているので、自分でも走ってみたいです。
ちゃんとオフシーズンでテストや準備をしっかりすれば、自信を持って戦えます。
僕は自分のドライバーとしての実力には自信がありますし、真剣に取り組めば必ず結果は出せると思っています。
目標は常に勝つこと。そして勝ち続けること、です。




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