アメリカンチーム誕生!ERTフォーミュラEチーム、「Kiro Race Co.」への改名を発表。ポルシェの型落ちパワートレインを使用へ。【フォーミュラE】

Formula E

シーズン9までは「NIO333レーシング」として知られ、シーズン10は「ERTフォーミュラEチーム」として戦っていたこのチームであるが、再び改名することとなった。10月15日、新たなオーナーにチームが買収された事を発表し、チーム名を「Kiro Race Co.」(キロ・レース・カンパニー)へと改名、チーム国籍も中国からアメリカへと変更することとなった。

©︎ Kiro Race Co.

ロサンゼルスを拠点とする投資会社「フォレスト・ロード・カンパニー」がERTフォーミュラEチームの株式を100%取得。この買収契約は9月ごろに締結したと言われている。

Kiroの由来であるが、これは”Kiro”が様々な言語で”Bright Light”(明るい光)と訳される事から名付けられた。

買収自体は「フォレスト・ロード・カンパニー」であるが、この投資会社に買収資金を提供したのはアレス・マネジメントの共同創設者であるデビッド・カプラン氏、ベネット・ローゼンタール氏であると言われている。ローゼンタール氏はこの他にも、ロサンゼルスFCの筆頭株主も務めている。なおデビッド・カプラン氏に関しては、Kiro Race Co.のマネージング・パートナーも務める予定だ。

©︎ Hankook

なおNIO時代から、このチームは自前のパワートレインを使用していた事で知られている。シーズン11においても、シーズン10で使用したHeilx製パワートレインの新型を使用する予定であった。しかし、シーズン11用パワートレインの実走行が叶わずベンチテストのみに留まっている事から断念。

シーズン11に向け、Kiro Race Co.はポルシェと技術提携契約を締結。シーズン11では、ポルシェがシーズン10にて使用していた型落ちのパワートレインを使用してレースを走る事が決定した。なおパワートレイン名は、ポルシェワークスやアンドレッティが「Porsche 99X electric」という名前である事から、Kiroが使用する型落ちパワートレインは「Porsche 99X electric WCG3」と名前を変えて参戦する。

このチームが型落ちパワートレインを使用するのは初めてではない。NIOがワークス参戦から撤退し、「NIO333フォーミュラEチーム」として再スタートしたシーズン6においても同様の事があった。この際は、ドラゴン・ペンスキーの型落ちパワートレインを使用。ただ元から素性の良いパワートレインではなく、パフォーマンス不足に悩まされた。このシーズン、チームは1ポイントも獲得出来ずに最下位で終えた。

シーズン6で使用された”NIO FE 005″ ©︎Motorsport Technology

なおアメリカの会社に買収された事から、チーム国籍をアメリカへと変更するものの、チームの拠点はNIO333時代から変わらずシルバーストーンに置く予定だ。

このチームの、チーム名リストはさらに長くなることになる。シーズン1の途中で、チャイナ・レーシング・フォーミュラEチームはNextEV TCRフォーミュラEチームへと改名。シーズン3からチームはNextEV Nioと呼ばれ、シーズン4にてNioフォーミュラEチームに改名された。2019年にリシェン・上海レーシングに売却された後、名前はNio 333 フォーミュラEチームへと変更され、最終的に2023年10月にERTフォーミュラEチームになった。

シーズン4で使用されたマシン ©︎ Kiro Race Co.

アレックス・フイ(Kiro Race Co.チーム代表)のコメント

「これは私たちのチームにとって本当に歴史的な瞬間です。フォレストロードのような、米国を拠点とする資産管理グループをフォーミュラ E に迎え入れることは、シリーズの成長と我々のチームにおける可能性の証です。彼らの投資により、私たちは自信を持って将来に向け準備を進め、最高のレベルで戦うことができます。それと同時に、我々は目標達成に向けてフォレストロードに加え、ポルシェモータースポーツと協力できる事を嬉しく思います。」

ジェレミー・タリカ(フォレスト・ロード・カンパニー マネージングディレクター)のコメント

「フォーミュラ E 世界選手権に参戦し、Kiro Race Co.して物語を始められることを大変嬉しく思います。このチャンピオンシップは、マクロとミクロの観点から見て成熟の重要な時期にあります。世界が電気自動車への大規模な移行に乗り出す中、レースにおいても、F1を超える最速の加速を誇るフォーミュラEマシンなど技術的に大きな進歩を遂げています。当社はKiroがトップチームになるよう、支援することに全力を尽くします。」 

ジェフ・ドッズ(フォーミュラE CEO)のコメント

「これはフォーミュラEKiro Race Co.にとって素晴らしい展開です。スポーツとエンターテインメント業界で確固たる実績を持つ洗練された投資家グループの参入を意味するからです。チームとその野心的な新オーナーによる投資は、私たちがチャンピオンシップを成長させ続け、世界中のファンやパートナーにとってより魅力的なものにするのに役立つでしょう。」 

ドライバーはどうなる?

KiroはフォーミュラEで唯一、シーズン11のドライバーを確定させていないチームだ。チームは日産を解雇されたサッシャ・フェネストラズとも交渉していた事で知られているが、最終的にはエースドライバーとしてダン・ティクタム、チームメイトとしてセルジオ・セッテ・カマラと2人とも継続する方向になりそうだ。

©︎ Kiro Race Co.

ドライバー発表に関しては、今月下旬のプレシーズンテスト直前に行われると想定されている。

買収の裏側

イギリスThe Raceによると、フォレスト・ロードとERTフォーミュラEに接点を持たせたのはダン・ティクタムであるという。

6月のポートランドePrixで初会議が行われ、この後長い交渉期間を経て先月契約が締結した。

ERTフォーミュラEチームは主要サプライヤーのHelix(Integral Powertrain)とXtracから派生した独自のパワートレインを使用しつつ、東京では4位になるなど主に予選で速さを見せていた。しかしHelix製パワートレインのアップデートも多くはなく、またチーム自体の資金も少なかった事から、2025年以降に関してはチーム存続そのものが不確実であった。

©︎ Kiro Race Co.

2024年初めには、中国のとある自動車メーカーを誘致しようとしていたものの失敗。そのため、今回の買収はチームの長期的な将来を考える上で重要なものとなる。

競争力はどうであろうか。Porsche 99X electric WCG3として知られる型落ちパワートレインは、共通コンポーネントのみGen3 Evoにアップデートした上で供給される。他チームがどれ程の進歩を遂げるかに掛かっているが、シーズン10のポルシェパワートレインは、ジャガーから僅かに遅れをとっていたものの2番目に強いパッケージであった。これを考慮すると、2026年後半以降のGen4時代が始まるまでKiroは比較的安泰かもしれない。

ただこれは、ポルシェのサポート次第になるのが実際のところだ。既にポルシェはアンドレッティにパワートレインを供給しており、リソースにも限りがある。

©︎ Habkook

サポートが最小限にとどまる場合、Kiroは再びグリッドの後方で戦う事を余儀なくされるかもしれない。

フォーミュラEのシーズン11は、11月4日から7日にかけてプレシーズンテストが行われ、12月7日にサンパウロで開幕する