HAAS F1チームが富士スピードウェイで219周を走破。6200人が集まった会場の様子をお届け!

F1

2日間の日程で行われたHAAS F1のテスト。
現在のF1では現行車でのテストに厳しい制限があり、今回は2年前のマシンを使ったTPC(Testing of Previous Cars)プログラムを用いて行われた。
この旧車テストではFIAグレード1サーキットで実施が可能であり、レギュラードライバーの走行には厳しい距離制限が設けられているが、それ以外のドライバーは最大実施日数である20日を超えなければ距離にかかわらず走行が可能である。

昨年12月にアブダビで開催されたシーズン後テストで平川亮がハースのステアリングを握って以来、
昨年の最終戦 アブダビGP後に行われたアブダビテストのドライバーに平川が起用されたのを皮切りに、宮田莉朋や小林可夢偉がTPCプログラムを通じてハースのマシンをドライブ。
今シーズンは日本GPまでアルピーヌのテスト&リザーブドライバーを務めていた平川もHAASに移籍し、バーレーンGPとスペインGPではFP1にも参加している。

今回、F1経験豊富なドライバーとなった平川とSuper Formulaチャンピオンの坪井翔がVF-23をドライブすることもそこまでの驚きではなかったかもしれないが、そのTPCの舞台に選ばれたのは富士スピードウェイ。
観客を集めた異例のテストデーとなった猛暑日の富士には、2日間で6,200人のファンが集まった。

ファンと交流する小松代表

晴れ渡る青空のもと、テスト初日の8月6日(水)はまず平川がシートに収まった。現行規定のF1マシンが富士を走るのは17年ぶりだったが、午前セッションで予選シミュレーションを行い1:19.772を記録。
最終的に午前のセッションで46周を走破した。
その後のピットでのサイン会を挟み、暑さが続く午後のセッションも問題なくスタート。
夕方まで30度を超える厳しいコンディションだったが、さすがになれた様子でマシンを操り、多くの新品タイヤを投入しながら富士山の麓でロングランプログラムをこなした。
午後は65周を重ね、プラン通りに合計111周をドライブ。6時間のセッションを締めくくった。

その後囲み取材では
「非常に暑く、車にもタイヤにも限界以上の厳しい条件でした。富士はたくさん経験してきたのでF1でドライブできて感慨深いところがあります」と走行を振り返る。
「2007年(富士で開催された)の日本GPを見てからレースを始めたので、いろいろと感じるものがありました」
VF-23の富士スピードウェイ用セッティングは存在せず、適切なエアロのない状態での走行となったのに対し「朝は車のバランスが悪く、改善していく中でランプランをこなしたのでタイムを意識していませんでしたが、そのトリッキーな環境でもタイムが出せました。100Rを全開で、富士に対してはダウンフォースが多すぎるのかなと。ソフトタイヤを(気温の下がった夕方の)今持ち込めばレコードタイムは出るでしょうし、(適切なセットのない走行としては)悪くないと思います」と、リザーブとしてチームに帯同する平川の詳細なコメントを聞くことができた。
McLarenとAlpineとHAASの差を聞かれた際には「どのチームにいっても、タイヤをうまく使うようにフォーカスするという考え方はあってるのかなと。そんなに大きな差はないです」と自信を見せた。

その後開催されたトークショーで、小松代表がまず「明日は坪井がコースレコードを出すから」と発言すると会場は笑いに包まれた。
走行を終えた平川は「(日本GPの)鈴鹿以来の日本でさすがに暑かった」と日本のコンディションの過酷さについてコメント。
今年のリザーブの役割を「レース中に小松さんの愚痴を聞く仕事」と表現すると、小松代表は「スパの予選ではドライバーが最終コーナーであることになったとき(Red Bullの角田裕毅がHAASのオリバー・ベアマンを追い抜きベアマンはタイムアップができなかった)も愚痴を聞いてくれた。ほかの人が僕の愚痴を聞かなくて済む」と内情を告白。
「小松さんはたまにモニターも壊しますからね」と冗談も飛び出た。
世界最高峰の舞台での感想は?という質問には「F1の世界に入って改めてレベルが高いことを実感した」と返答。さらなる努力をしていくとのことだ。

この日の平川の役割として、明日の坪井の初走行へ向けたデータ収集も含まれていた様子。
高まるファンの期待に対して坪井は「富士は庭だけどそうじゃなくなったような緊張感を感じてます。富士は知り尽くしているから(平川の)データを見ればどこでアクセルを踏めばいいかわかる」と自信を見せた。「シミュレータは乗りました。緊張もしているけどすごく楽しみです。コースレコードの話が出てきてプレッシャーなんですけど…(笑)」と、翌日に向けたコメントを寄せた。

翌8月7日(木)。日本のエース、坪井がついにF1デビューを果たす。
最初の発進時は何度もアンチストールに入ってしまうなど、初々しさを見せながらのピットアウトになってしまったが、その後は難なく周回を重ねる。

しかし最初の15分ほどで雨粒が落ち始めたことからプランを変更。
午前最後の走行でフライングラップを実施し、ミディアムタイヤで1:17.795を記録。予定よりも5周多い49周を走破した。
続く午後の走行では、太陽が顔を出し路面が乾くと、再度新品のミディアムタイヤを投入。1:17.470というフェリペ・マッサが2008年に記録したコースレコードから0.19秒落ちのタイムを記録して、合計108周の初F1ドライブに幕を下ろした。

走行後には短い時間ながら顔を見せた豊田章男会長や小松礼雄代表と笑顔で会話する様子が見れた。

その後の囲み取材では「初めてのF1は素直に楽しかった。夢のかなった1日になったので最高でした。昨日から今日にかけてコンディションが変わっているので直接比較はできないですが、しっかりタイムを出せたというところでは、自分の実力をしっかり示せたと思っています。」と走行を振り返る。
「F1で走れるだけの実力があるということは認識できました。この舞台でも戦えるんじゃないかいう自信を深められたし、今のF1ドライバーに混ざれたらどこまで通用すんだろうというのを確認したくなりました。」とコメントし「夢のまた夢だと思っていたF1」へ挑戦する気持ちを明らかにした。

この日もトークショーが開催されると、さっそく平川が「ほかのF1チームならホンダPUのF1に乗りたい(笑)」と冗談を披露。NGワードを公の場で堂々と発する平川に、杉山MCと小松代表が慌ててフォローに入る場面も。
「ぶっちゃけ、どのチームに乗りたい?」という意地悪な質問に対し「マクラーレンにもう一度乗りたい」と即答。これには小松代表も同意した様子で「ドライバーというのは最速の車に乗りたいと思うもの」とコメントした。
また「自分の初F1ドライブは観客のいないバルセロナだったので坪井には嫉妬しています(笑)」と、観客が大勢詰め寄せた異例のTPCでのF1デビューにコメントを寄せた。

サイン会でファンと交流する平川選手(?)と小松代表

先月グッドウッドでF1マシンを走らせた小松代表は、アンチストールが作動した坪井の初発進時の様子について「俺の方が上手かった(笑)」と笑顔を見せた。
その坪井は大きな一歩となったF1初走行を「ダウンフォースがすごいしストレートもすごい速い!」と振り返り、DRSを使用した感想として「マリオカートのキノコを使ったよう」と表現。
トークショーの間、何度も「楽しかった」と発したことからも、充実したセッションであったことが伺える。

2日間で合計219周を走破したふたりのTGRドライバー。Super Formulaチャンピオン連覇を目指す坪井翔と、F1に最も近い日本人ドライバー、平川亮の活躍に注目だ。

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