シーズン12・プレシーズンテスト【レポート】

トピック

フォーミュラEはきたるシーズン12の開幕に先駆け、10月27日から31日までの5日間でスペインのバレンシアで公式プレシーズンテストを開催した。
3時間のセッションが合計8回設定され、全20台が参加している。
シーズン12ではルーキードライバーが2名。
アンドレッティは昨シーズンのベルリンE-Prixでスポット参戦しポイント獲得したフェリペ・ドルゴビッチを起用。
クプラ・キロは今年FIA-F2に参戦していたペペ・マルティを起用した。

また、最終日のセッションは「Women Testing」として、史上二回目となる女性限定テストが実施された。
全チームが1人以上の女性ドライバーを起用することが義務付けられており、合計14名がエントリーした。


1日目:セッション1

新シーズン初走行となる初日は午後からセッション1が開始。
青空の広がる好天に恵まれ、気温は22℃、路面温度30℃でセッションがスタート。

全車が順調に走行する中、開始から1時間でDSペンスキーへ移籍のテイラー・バーナードがターン12外側のグラベルに飛び出しストップ。
数分の赤旗ののちにセッションは再開され、目立った損傷もないバーナードもガレージに戻ると30分ほどで走行を再開した。

セッション折り返しの1時間半時点で、ポルシェのパスカル・ウェーレインがトップタイム。
しばらくは遅いペースで走行を続けていたマヒンドラだったが、エドアルド・モルタラが2番手に躍り出た。
気温が24℃まで上昇する暖かい午後だったが、日没時間が近づくセッション1終了間際では22℃まで戻り、路面温度は25℃まで落ち込んだ。

初日のトップタイムは1:21.764を記録したポルシェのウェーレイン。
0.2秒遅れてアンドレッティのジェイク・デニス、マヒンドラのニック・デ・フリースがいずれも350kWで続いた。
また、300kWでの最速はジャガーのミッチ・エバンスで1:23.771。後ろにウェーレインとデニスがこちらでも好タイムを記録。

最多周回数はポルシェに移籍したニコ・ミュラーの51周で、45周のウェーレインとともに順調な滑り出しを見せた。


2日目:セッション2

続く2日目も晴天。
開始時の気温は12℃、路面温度は14℃でセッション2がスタート。

開始から20分でマヒンドラのモルタラとデ・フリースが1-2を記録。
1時間を経過するとポルシェのウェーレインとミュラーがタイムを塗り替えこちらも1-2となる。

セッションも残り5分を切ったころ、昨シーズンチャンピオンに輝いた日産のオリバー・ローランドが最終シケインでウォールに接触しマシンを止めた。

この際に掲示された赤旗でセッションが終了した。

トップタイムはモルタラで1:21.493、デ・フリースが僅差の1:21.586でマヒンドラは最終的にふたたび1-2につけた。
昨日同様3番手タイムを記録したのはアンドレッティのデニスで1:21:669。
300kWでの最速はダ・コスタの1:23.570で、モルタラ、ミュラーが続く形に。

なお、マシンを止めたローランドは歩いてガレージに戻った。1号車も大きな損傷はなくそのまま続くセッション3に備え準備に入った。

2日目:セッション3・模擬レース

このセッション3は全20台がグリッドに整列し、スタンディングスタートを行い27周で模擬レースを行う「Race Exercise」が設定された。

模擬レースレポートはこちらから。


模擬レースが終わると、通常のテストとして残り1時間半でセッションが再開した。
その後しばらくは早々にレースを離脱したDSペンスキー、日産の4台のみで走行が続く。

1時間を切るころにほかのチームも走行を開始。
残り25分時点でクプラ・キロのダン・ティクタムが1:21.805を記録しトップタイム。2周後にもフライングラップに入ると1:21.746で自身のタイムを塗り替えた。

最終的にティクタムはトップを維持。ミュラーが続き、模擬レース後半から独自メニューで走行していたバーナードが僅差の3番手タイムとなった。

300kW走行でのトップはバーナードの1:23.946。続いてティクタム、マロニー。
初日からドライバビリティに苦しむローラ・ヤマハだったが、ひとまずはトップ3へと滑り込んだ。

3日目:セッション4

折り返しの3日目は午前の1セッションのみ。
気温15℃、路面温度16℃でスタートした。

このセッションでは、これまでテストリバリーを使用していたポルシェがついに新リバリーを投入。
シーズン12を戦うマシンのお披露目となった。

そのまま一度もイエローフラッグが振られることもないクリーンな3時間が終了した。
このセッションでは全20台が300kWでの走行のみとなった。

そんななかトップタイムは波に乗るマヒンドラのモルタラで1:21.680。引き続きデニス、デ・フリースが追いかける展開となった。

前日のセッション3でトップタイムを記録したティクタムは13位、チームメイトのマルティは16位に沈んだ。

3日目:午後

セッションのない午後はインタビューやプロモーション撮影が開催され、ドライバーたちのリラックスした様子をみることができた。


4日目:セッション5

この日はレギュラードライバーにとってテスト最終日となる。
気温16℃、路面16℃でセッションがスタート。

4日目にして、これまで苦しいテストを過ごしていたローラ・ヤマハにとって大きな転機が訪れた。

開始から55分、全車がレースペース想定の走行を続ける中、22号車のマロニーが11位、11号車のディ・グラッシが12位につける。
マシンのコンポーネント交換をきっかけに、ローラ・ヤマハは復調を見せたのだった。

350kWでフライングラップを行った際の最終的な順位は17位と19位ではあったが、ドライバーふたりが首を横に振りつづけた3日間の苦労にようやく終止符が打たれたようだ。

セッション最速は日産のナトーで1:21.502を記録。好調の続くマヒンドラのモルタラとデ・フリースが日産の新23号車に続いた。
300kW走行でも同じくナトーが1:23.103を記録しトップ、モルタラ、デ・フリースが続くトップ3となった。

4日目:セッション6

レギュラードライバーにとって新シーズン開幕前最後の走行。
気温も24℃まで上がり、路面温度は31℃。相変わらずの青空が広がる天気となった。

このセッションも波乱のないクリーンな3時間。
開始早々、多くのドライバーが300kWでアタックモードを使用しフライングラップにはいる。
開始から30分時点ではティクタムがトップタイム。後ろに日産の2台が続く形となった。

その後、気温が22℃、路面温度25度まで下がると全車が350kWでアタックモードを使用。
最終的にはディフェンディングチャンピオンのローランドが1:21.498を記録し日産の1号車を1位に置き最後のセッションを締めくくった。
続くは0.002秒差でバーナード、絶好調マヒンドラのモルタラは3位につけた。
300kW走行では1:23.281のデニス、モルタラ、キャシディのトップ3となった。


総合リザルト

CarDriverTeamTimeSessionGapInterval
148Edoardo MORTARAMAHINDRA RACING1:21.4932
21Oliver ROWLANDNissan Formula E Team1:21.49860.0050.005
377Taylor BARNARDDS PENSKE1:21.58620.0070.002
423Norman NATONissan Formula E Team1:21.50250.0090.002
521Nyck DE VRIESMAHINDRA RACING1:21.58620.0930.084
627Jake DENNISAndretti Formula E1:21.59960.1060.013
794Pascal WEHRLEINPorsche Formula E Team1:21.65260.1590.053
833Dan TICKTUMCupra Kiro1:21.65760.1640.005
916Sébastien BUEMIEnvision Racing1:21.67360.1800.016
1037Nick CASSIDYCitroën Racing1:21.67760.1840.004
113Josep María MARTÍCupra Kiro1:21.70860.2150.031
129Mitch EVANSJaguar TCS Racing1:21.71050.2170.002
1351Nico MÜLLERPorsche Formula E Team1:21.74260.2490.032
147Maximilian GÜNTHERDS PENSKE1:21.79760.3040.055
1528Felipe DRUGOVICHAndretti Formula E1:21.80850.3150.011
1613António Félix DA COSTAJaguar TCS Racing1:21.98160.4880.173
1725Jean-Éric VERGNECitroën Racing1:22.06060.5670.079
1811Lucas DI GRASSILOLA YAMAHA ABT FORMULA E TEAM1:22.08050.5870.020
1922Zane MALONEYLOLA YAMAHA ABT FORMULA E TEAM1:22.08660.5930.006
2014Joel ERIKSSONEnvision Racing1:22.31820.8250.232

総合タイムでの最速はマヒンドラのモルタラ。
セッションの合間はガレージのシャッターを閉めるなど、”秘密”を発見したように見えるマヒンドラ。
シーズン9でチャンピオンシップを争ったモルタラとデ・フリースとの強力タッグを擁するこのチームは6セッションのうち5度のトップ3入りを果たし、開幕戦への期待の高まる4日間となった。

また、フレデリック・バートランド代表はこの結果について、
「テストはあくまでテストで、リザルトは重要なことではありません。オフシーズンのあいだ開発してきたことが正常に機能しているかを確認するのが今回の仕事です。そして、ドライバーたちが自信をもってプッシュできる車を用意することが大事となります。」
「今回のテストを通して、私たちのチームが開幕戦に向けて”準備が整っている”と感じることもできましたね。私たちの”秘密”があるとすれば、安定して堅実なテストを送り、よりよい精神でペースの向上に挑むことができたということでしょうか。」
「やるべきことをやれば、昨シーズンの(チームズランキング)4位という結果を上回ることもできると思います。」
と、慎重ながらも新シーズンへの自信をうかがえるコメントを残した。

ドライバーズチャンピオン2連覇を狙う日産はローランドが2位、昨シーズン苦しんだナトーも4位につけた。

トマソ・ヴォルペ代表は、
「私たちは様々なセットアップを試し、ドライバーの快適性を求めてきました。ノーマン(ナトー)がファステストラップを記録したときには”最高の時間だ”と言っており、これは間違いなく良い結果といえますね。」
「(昨シーズン末をもって)マクラーレンが撤退したため、日産パワートレイン勢は2台となりました。これで6台のポルシェや、4台のジャガーにマニュファクチャラーズランキングで挑まなければいけません。厳しい展開が予想されますが、私たちの目標はふたたびドライバーズチャンピオンシップで優勝することです。」

「フォーミュラEの舞台で日本のブランドとしてレースすることを誇りに思っています。昨シーズン、東京E-Prixで優勝することができましたし、このシーズンも東京で優勝できることを願っています。」
と、シーズン12への明確な目標を明らかにした。

ローラ・ABTとタッグを組み参戦しているヤマハのフォーミュラE開発リーダーを務める梅田泰宜氏からは、
「シーズン11では年間を通して、一貫したパフォーマンスを維持し続ける事が難しかったため、シーズンオフの期間に、車のパフォーマンスとタイヤを常に適切なウィンドウにキープする改善に取り組んできました。ヤマハが取り組むエネマネも、時々刻々と変化する車や路面、レースの状況にシームレスに対応できるようアップデートし、レースウィークを通して、より競争力を維持できるよう取り組んでいます。」
「バレンシアでは、オフシーズン中のチームのハードワークの甲斐もあって、テストの後半には、車のバランスが良くなり両ドライバーもポジティブなフィーリングでテストを終える事ができ、初戦のサンパウロに向け良い形で締めくくる事ができました。1週間、全8セッションというタフなテストでしたが、良いデータをたくさんとれたので、サンパウロまでさらにプッシュします!」
と、参戦2年目となるシーズン12へのポジティブなコメントを聞くことができた。

クプラ・キロから初参戦となるのはスペインうまれの20歳、ペペ・マルティ。
母国スペインでフォーミュラE初走行を果たした彼にクプラ・キロ加入のいきさつや、新シーズンへの意気込みを聞いた。

「今年の初めからクプラのアンバサダーを務めていて、とてもいい関係を築いてきました。」
「母国でこのマシンをドライブできるのは素晴らしいことですし、バレンシアでの初めての経験を楽しんでいます。マドリードE-Prixでは、スペインの観客たちとともにいい時間を過ごせることを楽しみにしています。」
「(チームメイトの)ダンからは多くのことを学んでいるところです。非常に速く、経験豊富なダンが隣にいるのは心強いですね。」

また、実は日本語が少し話せることが自慢だというマルティ。
「日本に行くのが楽しみです!」と、日本語でメッセージをもらうことができた。

女性テスト

プレシーズンテスト最終日は女性限定テストが設定された。
初開催となった昨シーズンのテストに比べ2倍となる6時間の走行時間が設けられ、全14名の女性ドライバーがレギュラードライバーらと同じ条件のもとに走行する。

また、地元の若い女性約100名を対象に、教育的なワークショップやドライバー・チームとの交流の機会が提供される”FIA Girls on Track”も開催される。
モータースポーツ業界への関心と参加の入り口を広げるこの活動は、可視性と関与の向上を目的としている。

この取り組みに対しフォーミュラEとFIAは、モータースポーツにおける多様性と平等の推進に対する長期的なコミットメントを象徴するものとしている。

フォーミュラEでは多くの女性ドライバーが開発ドライバーとして長期契約を結んでおり、GB3チャンピオンシップに参戦中のアビー・プリングは日産、同じくGB3に参戦中のビアンカ・ブスタマンテはクプラ・キロ、European Le Mans Seriesに参戦するジェイミー・チャドウィックはジャガー、2020年にルーキーテストに参加して以降シミュレータードライバーとしてエンビジョンを支えるアリス・パウエルなどが今回のテストにも参加している。

また、ジャガーは2024年から全日本Super Formula選手権に参戦する野田樹潤(Juju)をチャドウィックのチームメイトとして起用。
フォーミュラEでは、昨シーズンにローラ・ヤマハをドライブした小山美姫以来2人目となる日本人女性ドライバーとなった。

5日目:セッション7

夜に雨が降り、雲の多い暗い朝からセッションがスタートとなったが、セッションの折り返し1時間半頃には日が差すまでに快復。

途中でシトロエンの25号車のステアリングを握るタチアナ・カルデロンが数度コースアウトしたほか、エンビジョンのエラ・ロイドがグラベルに足を取られるも大きなクラッシュのない3時間のセッションとなった。

最速タイムを記録したのはまたしてもマヒンドラ。
デ・フリースから21号車を引き継いだクロエ・チェンバースが1:23.584でトップタイム。
日産のプリング、ジャガーのチャドウィックのトップ3。
そのうしろにパウエル、ロイド、ブスタマンテ、カルデロン、ナレア・マルティ、マルタ・ガルシアと経験豊富なドライバーが続くなか、初走行の野田樹潤がトップ10に入った。
300kW走行では、チャドウィックが1:25.706を記録。エンビジョンのパウエル、チェンバースのトップ3となった。

5日目:セッション8

最後のセッションとなったが、天候は一気に悪化し暗い雲が空を覆いつくした。

開始から30分、エンビジョンの16号車、パウエルがターン3でマシンを止めたことに伴い赤旗が振られた。
マシンを回収するとすぐにセッションは再開した。

マシントラブルが発生しガレージに戻ったパウエルだが、残り1時間半ほどでトラックへ復帰し走行を再開。最終的に4位タイムを記録した。

プレシーズンテスト最後のセッションでも最速はマヒンドラとなった。
ふたたびチェンバースが1:22.767でトップタイム。
プリングが0.064秒差で僅差の2位、その後0.770秒差でブスタマンテが続いた。
なお、このセッションでは全車が300kW走行となっている。

女性テスト総合リザルト

CarDriverTeamTimeSessionGapInterval
21Chloe CHAMBERSMAHINDRA RACING1:22.7672
23Abbi PULLINGNissan Formula E Team1:22.83120.0640.064
3Bianca BUSTAMANTECupra Kiro1:23.53720.7700.706
16Alice POWELLEnvision Racing1:23.65720.8900.120
14Ella LLOYDEnvision Racing1:23.67620.9090.019
13Jamie CHADWICKJaguar TCS Racing1:23.69220.9250.016
25Tatiana CALDERÓNCitroën Racing1:23.83821.0710.146
28Nerea MARTÍAndretti Formula E1:24.42821.6610.590
9Juju NodaJaguar TCS Racing1:24.44221.6750.014
22Marta GARCÍALOLA YAMAHA ABT FORMULA E TEAM1:24.61521.8480.173
94Gabriela JÍLKOVÁPorsche Formula E Team1:25.98623.2191.371
77Jessica EDGARDS PENSKE1:26.06023.2930.074
51Janina SCHALLPorsche Formula E Team1:28.85426.0872.794
7Lindsay BREWERDS PENSKE1:28.91926.1520.065

前日までバーレーン・インターナショナル・サーキットでF1アカデミーのテストにも参加していたチェンバース。
2回目のフォーミュラEドライブとなった彼女は今回の最速マシンでの走行について、
「バーレーンテストの翌日というタイトなスケジュールで、すぐにフォーミュラEのマシンに乗って速さを出せたのは良い感覚でした。非常に異なるマシンとトラックにすぐに適応できたことは、間違いなく良い結果でした。」
「昨年から進化したことも感じられましたし、またフォーミュラEに戻ってきたいと願っています。ここではより多くのチャンスが得られることを期待できますからね。」
と、自身の将来についても前向きなコメントを聞くことができた。

日産の23号車のステアリングを握ったプリングは3回目のフォーミュラEドライブとなった。
「バレンシアは非常にフィジカルなコースですが、マシンはかなり快適に感じました。」
「もちろんチームとしてチャンピオンシップ優勝を目標としていますが、今は確実に成長し、学習し、開発することに重きを置いています。また、フルタイムドライバーとしてフォーミュラEへ参戦したいと思っていますが、それは将来の話です。午前中はレース形式のシミュレーションを行い、私の技術面を重点的に学ぶセッションとなりました。」
「私はGB3で”予選アタックをまとめ上げる”ことに苦しんでいました。フォーミュラEのマシンはさらに容赦なく”すべてをまとめ上げる”ことを求めてくるので、その点で多くを学んでいます。」
「日産と仕事をするのは本当に素晴らしいことです。日本には鈴鹿という美しいコースもあるし、チームとともに東京E-Prixに行けることを期待しています。」
と、開発ドライバーとして再来年導入されるGen4マシンのシミュレーター開発を担いながら、今冬にFIA-F3マシンのテストも予定されている彼女の明るい未来をうかがうことができた。


バレンシアで開催された5日間、合計18時間にわたる公式プレシーズンテストが無事に終了。
10チーム・20ドライバーがEV世界一を目指すABB FIA Formula E World Championship シーズン12の戦いは、12月5日のサンパウロE-Prixで開幕する。


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