5月30日から6月2日にかけてイタリア・サルディニア島で行われたラリーはオット・タナクの劇的な逆転勝利で幕を下ろした。
オジェ vs タナク
WRC新フォーマットのテストとして3日間にステージを凝縮して行われた今回のラリー。予想以上にラフな路面の最初の犠牲者となったのはエルフィン・エバンスだった。SS1でパンクを喫した影響から残りのステージて慎重にならざる負えず、早々に戦線離脱。ヌービルは先頭出走で実質的に勝負権がないこともあり、ラリーはオジェ vs タナクの様相となった。
土曜日になってからも激しい首位争いが展開されたが、SS8 エルーラ2で流れが大きく変わる。ヌービルがデイリタイアを喫したのだ。マニュファクチャラーズタイトルを一番のプライオリティとするヒョンデにとって、一番避けなければならないのは、2台分のマニュファクチャラーズポイントを獲得できないことである。(マニュファクチャラーズポイントは登録3台中の上位2台のみに与えられるため) SS8終了後、タナクとソルドには絶対完走の指示がされる。
We gave everything. We’re trying to be safe and not push it. We’ve been asked to be safe and not push it.
すべてを出し切った。安全第一で、無理はしない。安全であること、無理をしないことを求められている。
Ott Tänak – After SS9
SS9で首位の座をオジェに譲ると、その差は土曜終了時点までに17.1秒まで広がった。
地獄と化す高級リゾート地
最終日のサルディニア島には更に深く砂が積もり、ドライバーからは「コンディションが悪い」「とても難しい」「フェシュフェシュのようだ」等のコメントが相次いだ。
It’s quite a tricky stage, really narrow. I don’t know why but I am so lost on the pace today. I am struggling and have no grip anywhere. Nothing more I can do.
かなりトリッキーなステージで、本当に狭い。なぜかわからないけど、今日はペースが上がらない。苦労しているし、どこもグリップしていない。もうどうしようもない。
Adrien Fourmaux – After SS14
グラベルラリーは一般的に後方出走が有利とされているが、ラフグラベルにおいてはそうではない場合がある。深い砂に出来たわだち(車が走った跡)は操舵やブレーキングを困難・予測不能にさせることがあるので、かえって遅くなるケースが少なくないのだ。
タナクはオジェに一切譲ることなく、ヌービルとのSSタイム1,2位を連発。SS15 CALA FLUMIN 2までにオジェとの差を6.2秒まで縮める。
ドラマの舞台となるSS16 SASSARI – ARGENTIERA 2 / Wolf Power Stage
海岸線の美しい山岳地帯はこれまでに幾度のドラマを魅せてきた。2019年には暫定首位のタナクがパワーステアリングを失いSS中盤でスピン、優勝をソルドに譲った。約6年振りの勝利に涙するソルドを覚えている人も多いだろう。
タナクはステージをヌービルから2.3秒遅れの2番手で終える。ラリー1最後のスタートはオジェだ。
S1でタナクから0.7秒遅れる。しかしこれはステージ暫定3番手のエバンスより速いタイムであり、現時点でオジェの優勝を疑う者は少なかっただろう。しかしその差は徐々に広がり続け、オジェはタナクより6.4秒遅れてフィニッシュゲートをくぐった。0.2秒差でタナクの勝利である。
“0.2秒”
これは2011年のラリーヨルダンと並び、WRCの僅差フィニッシュ記録タイである。2019年に劇的な敗者となったエストニアの英雄は、5年後に忘れ物を取り戻した。
オジェのフィニッシュ後、タナクは既に報道陣の消えた自車で一人ルーフに登り、勝利の雄叫びをあげる。
このシーンはABEMA TVで無料公開されているので是非観てほしい。誰もが敗北を悟り、チームも諦めた戦いに彼は勝ったのだ。筆者は一生忘れられないだろう。
https://abema.tv/channels/world-sports-3/slots/94nacPeMsN8g71
| POS | No. | Driver | Co-driver | Team | Time | Diff 1st |
| 1 | 8 | オット・タナク | マーティン・ヤルベオヤ | ヒョンデ・シェルモービスWRT | 3:06:05.6 | – |
| 2 | 17 | セバスチャン・オジェ | ヴァンサン・ランデ | トヨタ・ガズーレーシングWRT | 3:06:05.8 | +0.2 |
| 3 | 6 | ダニエル・ソルド | カンディド・カレーラ | ヒョンデ・シェルモービスWRT | 3:08:31.4 | +2:25.8 |
| 4 | 33 | エルフィン・エバンス | スコット・マーティン | トヨタ・ガズーレーシングWRT | 3:08:43.4 | +2:37.8 |
| 5 | 13 | グレゴワール・ミュンスター | ルイス・ルーカ | Mスポーツ・フォードWRT | 3:12:48.5 | +6:42.9 |
| 6 | 16 | エイドリアン・フルモー | アレクサンドル・コリア | Mスポーツ・フォードWRT | 3:22:49.0 | +16:43.4 |
| 7 | 18 | 勝田貴元 | アーロン・ジョンソン | トヨタ・ガズーレーシングWRT | 3:47:33.7 | +41:28.1 |
| 8 | 11 | ティエリー・ヌービル | マーティン・ヴィダガ | ヒョンデ・シェルモービスWRT | 3:56:18.2 | +50:12.6 |



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